試験の施行開始にあたりこの検定試験の意義と役割についてご説明をいたします。世界の製造業において三次元CADとの取り組みが始まって既に30年以上の歴史があります。当初は実験的に使用し、実用化までには数々の問題と課題がありました。コンピューターの基礎技術が開発途上にあって演算に長時間を要し、複雑な図形には対応できず、データの2次利用ができない等々の技術的な問題が多かったことに加えて、価格が高く導入に二の足を踏む企業がほとんどでありました。導入した企業においてもこれに携わる技術者は「金食い虫」とか「高価なおもちゃ」とか等々の誹謗中傷や非難の目を向けられ、「厄介者」扱いをされた厳しい経過をたどり現在に至っています。
現在、三次元CAD技術は急速に普及が進み、自動車製造業関連、電機製造業関連、造船業関連等々の大企業においては必要不可欠なものとなっています。日本自動車工業会等では三次元の単独図面の標準化などの作業が進んでいます。しかしながら、中・小規模の製造企業にあってはまだ高価なものであって全体的な普及には時間がかかると思われます。
視点を変えて現在の日本の「モノづくり」状況はどうなっているのか。
「モノづくり」を支える人材としての学生の理工系離れが顕著となり全教育機関(専修学校、各種学校も含む)における理工系の生徒・学生の割合は10%程度という状況です。理工系の教育機関の指導者(教員、教授等)へのヒアリングでは学生の殆どが小学校・中学校・高校において志望学校に合格するための受験勉強が主体となり基礎学力(算数、理科等)に欠けている学生が多いので苦慮しているとのことでした。そのしわ寄せとして本来教えるべき項目が欠けたり、時間をかけることができず、不満と不安を抱えた状態で学生を社会に送り出していることに忸怩たる思いを持っていると嘆いておられました。この状況下において新入社員を迎える企業の教育担当や現場の管理者のご苦労は察して余りあります。3D−CADの操作はコンピューターの普及によって戸惑うことなく受容れられ、習熟にも短時間で使うことができるようになりました。道具として3D−CADを操作することは出来ても何のために道具を使うのか、その道具が何故必要なのか、どれほど優れた道具であるのかということを理解しないまま使っていることが今後の課題であると思います。製造業においては設計業務で使われることが多いのですが、設計業務の基礎知識や基本的な事が解らない状態であっても現在のCADソフトは進化していてある程度のところまでソフトが自動的にこなしてしまうことができるようになりました。この状況は道具を使っているのではなく、道具に使われていると言わざるを得ません。設計業務では基礎・基本となる土台が無ければ新しい製品を生み出すことはできないと思います。前述した三次元CADに取組んだ先人たちが艱難辛苦の末に実用化にまで至ったことが無駄になってしまうのか。簡単に操作ができるように、すばやく「解」が求められるように開発したのは現在の技術者に楽をさせるために苦労したのではない。開発期間の短縮や、新技術の研究開発などに寄与するための苦労であったはずです。彼等は未開の分野を自分たちが学んだ知識や技術を基盤として手探りで研究開発をして切り拓いていったのです。
昨今は現物、現場を知らない状態においてバーチャルの世界(デジタルモックアップ)だけでモノづくりに関与しているように感じられます。製造企業であるにも拘わらず、設計部門が現物、現場を体感していないために製造部門と乖離しているように感じられ、さらにはユーザーの安全・安心・利便性という最低限の配慮にまで考えが及ばない状況が生まれています。より良い製品を社会に供給する製造企業、製造企業にあってより良い製品を生み出す技術者、技術者のためにより良い操作性や高性能を追及するソフトベンダーが相互に協力、切磋琢磨する環境づくりこそがこれからの「モノづくり」の発展の基礎であると思います。その中にあって最も重要なのは技術者であると思います。技術者の知識や能力を高めることが最重要課題と考え、道具を使いこなせる技術者の育成を目指して「機械工学知識検定試験」、「三次元技術検定試験」を施行することに至りました。
現在、製造業にあっては必要不可欠となった三次元技術、その2次利用として三次元データを活用した製品の仕様書、整備マニュアルや広告分野においても活用されています。
医療分野においては歯科におけるインプラント、MRIの三次元表示等にも活用されており今後は製造業以外の分野への技術普及も進むことと思います。三次元による表示が有効な分野、多くのデータ処理やシュミレーションを伴う分野における数字の羅列から要素を取り込んだ三次元形状による「一目瞭然」という可視化への処理技術等あらゆる分野への波及、普及が進むことが予想されます。当協会は三次元技術の利用、活用、応用といった技術普及にも力を注ぎ、必要な検定試験を順次立ち上げる準備を進めております。
平成21年12月1日
特定非営利活動法人
三次元CAD技術者協会 |